家を”買える金額”と頭金の関係

2018-03-18
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賃貸アパートやマンションにお住いの方であれば、こんなチラシが集合ポストに入っていることはありませんでしょうか。
「頭金0円!今の家賃より安く家が買えます!」
要は、近所で分譲している戸建てやマンションの広告というわけですが、どんな間取りであるか、設備はどうかといったことなどを差し置いて、何よりも大きな文字で上記のようなキャッチコピーが書かれています。
賃貸住宅の家賃も地域や築年数によって違いますので一概に家賃より安いとは言えないかもしれませんが、とはいえ、毎月の家賃より安い支払いで持ち家を持てると聞けば誰しも魅力的に聞こえることでしょう。

ですが、本当に家賃より安く持ち家を持つことができるのでしょうか。果たして、リスクはないのでしょうか。今回は「家を買える金額」や「組めるローン金額」、そして「頭金」の重要性について解説させていただきたいと思います。

「本当に家賃より安い?」を検証

まず、この後のお話をさせていただくにあたり、共通する設定として「年収400万円のボーナス無しのサラリーマン」というモデルを例として進めていきたいと思います。この年収400万円が多いか少ないかは別として、本当に家賃より安く家が買えるのかを検証してみたいと思います。
住宅ローンの中でも最も有名な住宅金融支援機構が提供する「フラット35」の公式ホームページには、便利なローンシミュレーターがあります。そのページをお借りして「年収から借入可能額を計算」を行ってみると以下のような結果となります。

年収から借入可能額を計算

  • 年収400万円
  • 返済期間35年
  • 金利1.36%(最多実行金利)
  • 元利均等払い

「借入可能額3897万円」

意外にも、4000万円近くの借入可能額が算出されました。そこで、3897万円を頭金0円で借り入れたとして、毎月の返済がどのくらいになるかを「借入希望金額から返済額を計算」というページで計算してみると以下のようになりました。

借入希望金額から返済額を計算

  • 借入希望額3897万円
  • 返済期間35年
  • 金利1.36%(最多実行金利)
  • 元利均等払い
  • ボーナス返済無し

「毎月返済額11.7万円」

毎月11.7万円と聞いて、この記事をお読みいただいている方はどのように感じたでしょうか。少なくとも筆者は、「非常につらい出費だ」と感じます。
何故なら、一般的な認識で年収400万円というのは、特別に断りが無い限り「税込み年収」となります。つまり、社会保険料や所得税等を引かれる前の年収です。尚、年収400万円ですとおおよそ「300万円」が手取り年収という事になります。
よって、毎月25万円が自分の手元に残る給与という事になるわけですが、この25万円の給与に対して、先ほどの住宅ローンの返済11.7万円の割合を考えてみましょう。
なんと、「46.8%」ものお金を手取り給与から支払うことになるのです。
そう考えると、どう考えても「家賃より安い」なんて言えませんよね。

「家賃より安い!」のカラクリとローンが組める金額

ではなぜ、集合ポストに入っているチラシの多くが「家賃より安い!」と謳うのでしょうか。実際、そのチラシの毎月の支払金額を見てみると「7万円」ですとか、「8万円」と表示されていることが多いかと思います。そこで、毎月の支払い金額を「8万円」として、改めてフラット35のホームページにある「毎月の返済額から借入可能金額を計算」というページで借り入れ可能金額を計算してみると、「2672万円」という金額が算出されました。
最初に計算した3897万円よりも1000万円以上低くなってしまいました。
これでは、せっかく夢に描いた家もグレードダウンすることは間違いないでしょうから、買う気も失せてしまいます。
とはいえ、チラシの言っていることも嘘ではなくちゃんとした根拠があります。
上記までの例でもう一つ注意したい部分があるのですが、何だと思いますでしょうか。


答えは「金利」です。


実は、ポストによく入っているチラシは「変動金利」を参考にシミュレートしていることが多く、これが借入可能額と毎月の支払いを魅力的にしているマジックの一つでもあります。
大手金融機関の住宅ローン金利を変動金利に絞って見てみると0.6%や、中には0.5%を切るものもあります。
そこで、仮に年収400万円の人が0.6%で借り入れられる金額をフラット35のシミュレーターで計算してみると、なんと「4418万円」との金額が算出されます。当然、4418万円も借り入れれば毎月の支払額は更に大きくなりますので、毎月の支払額を8万円として改めて計算してみると、借入可能額は以下のようになります。

 

  • 毎月支払額8万円

  • 借入期間35年

  • 金利0.6%

 

「借入可能額3029万円」

 

 

最初の計算ほどではありませんが、何とか立派な持ち家が買えそうな金額が借りられる予感がしてきますね。つまり、集合ポストに投函されているチラシの多くは金利を低く見積もり、毎月の支払いを家賃程度に抑える数字のマジックで魅力的な演出をしているのです。

組めるローン金額≠家を買える金額

ここまででお気付きの方も多いかもしれませんが、ローンを組めるからと言って、それは家が買える金額ではないということは肝に銘ずるべきかもしれません。
先ほど、「年収400万円の人は手取り300万円である」とお伝えしましたが、これは目安とは言っても、大きくズレた計算ではありません。税率は金利のように変動しないため、大体どの人も同じような計算になるためです。
一般的に「家賃は年収の3分の1まで」と言われていたり、消費者金融の総量規制でも「年収の3分の1まで」といった決まりがあります。
あらゆる場面で「年収の3分の1」というワードが良く使われますが、実は住宅ローンを扱う金融機関でも「年収の25~30%」を目安とした計算で審査を行いますし、フラット35のホームページにおいてもやはり「他の借り入れが年収の30%未満であること」という基準を提示しています。つまり、消費者金融等で借り入れがあっても年収の3分の1までを許容範囲とし、残りのうちの30%は家賃の代わりとなる支払いとして確保しましょうという前提で融資を実行してくれるのです。
よって、前項でご説明させていただいたように、年収400万円の人の毎月の給与が25万円だとするなら、3分の1である「8.3万円」の支払いが妥当という事になり、変動金利ではない「全期間固定金利1.36%」で計算すると、「2772万円」が金融機関でも認める安全な支払い金額という事になるのです。

いかがでしょうか。最初に計算した3897万円よりも低くはなりましたが、2772万円というローン金額までであれば辛くない支払い金額で家を買うことができるという事になります。
もし今後、「全期間固定〇%!家賃より安く家を買えます!物件価格○千万円!」なんてチラシが入っていたら、一度検討されてみても良いかもしれませんね!

忘れてはならない頭金の重要性!

さて、家を買う際に利用するローンの理想的な金額と、自分の年収で家を買える金額を考えてみましたが、上記までのお話では、「頭金」について一切触れていません。
再度、集合ポストに入っているチラシを例にすると「頭金0円!」と書いてあることが多いと申し上げました。
頭金が0円というのも家を買うのに魅力的な事ですが、そこにリスクはないのでしょうか。
至極分かりやすい表現で申し上げると、頭金0円という事は、家を買う資金を全額「借金する」ということと同義です。
つまり、最低ラインである年収の3分の1を毎月の支払いに充ててしまうと、いざという時のお金が足りずにローンの支払いが滞り、最悪の場合は破綻に陥る可能性があります。
また、頭金があるのと無いのとでは、金融機関の見る目も違ってきて審査内容も変わります。つまり、「頭金すら用意できない人」と見たら金利を高めにして早く資金の回収を図ろうとしますし、逆に頭金をしっかり用意できる人であれば「この人に貸しても安心」という事で金利を低くしてくれることがあるのです。
更に、もし住宅購入の直後に万が一のことが起こって多額の支払いが必要になったり、引っ越しを余儀なくする出来事が起こった場合に、家を売れない可能性があります。住宅ローンで家を購入したのですから、その借り入れを完済するか、家の売却額が借入額より多くなければ家を売る事すらできないのです。

ここで、頭金0円のリスクをまとめておきましょう。

  • 頭金0円ということは、毎月の支払いを自ら多くしているという事になる
  • 銀行は融資の安全性を頭金の有無でも判断する
  • 頭金0円だといざという時に家を売ることができない可能性が高い

当然、ローンを利用せずにキャッシュで家を買えるほど余裕があるのなら、それに越したことはないかもしれません。しかし、キャッシュを支払うという事はいざという時の資金までも口座から引き出すということと同じです。そういった事態を未然に防ぐためにも住宅ローンというのは必要なものなのです。
かといって住宅ローンに頼りきりになるのではなく、先々のリスクに備える為にある程度は頭金を入れ、収入とのバランスが取れた住宅ローン利用をすることが、望ましい形と言えるのではないでしょうか。

まとめ

日本の住宅事情を語るメディアの多くが「供給過多」という言葉を使うことが多くありますが、それは国交省や住宅関連NPOが公表している資料などからも明らかなことです。これは、欧米と違って日本は新築物件ばかりをもてはやし、まだまだ使える中古物件に価値を見出そうとする習慣が無いことが要因の一つと言えるでしょう。

幸い、最近では中古物件をリノベーションして新築同様に生まれ変わらせることで安く持ち家を買うことができ、固定資産税も安く、立地も比較的選びやすいという、一種のスキームのような住宅購入が流行り始めています。
ただ、住宅ローンという側面で見た際に、物件の価値を安く見積もられた結果、融資額が低くなってしまったという事例もあります。
そのような悲しい現実を打破するにも、やはり頭金は必要であり、熟慮されたローン返済のシミュレーションを事前に行っておくことはがスムーズ且つ、安心の物件購入に繋がるのではないでしょうか。

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